六月の風にふくんだ夏のシケリが
僕までとどいてその海に沈む
海面に輝く幾何学的なしぐさの光を
見上げている
ぷかる、ぷかる
海中に漂っている静かというか
音が偉大すぎて一部になってしまうというか
とにかくここちよくて
そのうちに瞼を閉じる
とおくから夏が手を伸ばすのが分かる
ぼくもその感覚の方へ手を伸ばす
そして確かにつながる

(空には入道雲が黙って育ち
蝉たちはほんとはとっくに成虫になっていて
ぼくたちが目覚めるまで息をひそめているんだ)

夏と手をつないだ僕の精神は
おおいなる海中の四方八方へアンテナを巡らせ
そう、そのままでいいと
ぼくはあの四次元の夏虫


幻想郵便局 (講談社文庫)




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