銀河と四季の道標

綴りたいことは日々あふれるからその溜め処。

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スケッチ

-スケッチ-

ひつるが瞼をこすりこすり窓を開けると曇り空だった。眠りの浅さが拍車をかけて頭に10トンくらいの塊が乗っている。はぁ、と小さな溜め息をつくとしぶしぶ身支度にかかる。

 

 (どうしたものか。昨日の全ては幻だったのか)あまり働かない自分の脳では整理できずまあもとから働かないと自身につっこみを入れることでしかとりあえずの終止符が打てない。歯磨きをすませ薄めの上着をかぶり出ることにした。

 

緩弦地方は基本1年穏やかに四季が流れる。他の地方では真冬と言われる時期でも細雪が、それもどこかから流れてきたようなものがちらちら舞う程度だ。暖房はいれるが冬の8割は稼働させずに済む。それこそこどもたちは1年中半袖半ズボンということもこの地方では更で大人もそんなラフな格好の者が多い。

 

ひつるの仕事は夏がピークでそのほかの時期は適当に休みを取って問題がなかった。またこの地方の地域性で夏もほとんど緩やかなため1.2週間が稼ぎ時でそのほかは自由に暮らす事が出来た。休みの時期に入れば日がなぶらぶらと歩き回り適当な場所で腰をおろしてはスケッチして過ごすことが日課となっていた。

 

その絵はまたとある場所でそこそこの値段で売れ、それを小遣いに、まあそこそこの安定した暮らしができていた。

 

-絵画コレクタ/白昼の悪事-

 ひつるは一カ月ほど絵を描いたり描かなかったりぶらぶらと過ごす日々を送った。そして9月の末日とある店を訪れた。「斎藤妙宝堂」というなんとも古めかしい木材の小さな建物の中には白い長髪白いひげを生やしだるまのようにコロコロとした小さな老人がいた。ここの店主“さいろう”である。

「ひつづ、どうだね、今月…むんむぬ…」

「どうかな…さいろうさん選んでくれればいいよ…あんまりよくない」

「うーん、どれどりぇ…」「んー」

「…5万でどうじゃ?」

「どうじゃもなにもないよ、あるはずがない、どうしてこんなどうしようもない絵をさいろうさんは買ってくれるんだい?そんな()端金(・・)()

「んふっふっふ。価値など人それぞれだわぃ」「これはおいらの趣味でのー」

「…ありがとう」

いったいあのおじいさんはあの絵をどうしてるんだろうと、ひつるは妙宝堂の帰り道にいつも考える。売った絵は次の月に寄るとあの狭い店内に見当たらず、しかしあんな素人がしかも趣味で描くような絵が高値で売れるなど信じられるはずもなく。後ろめたくも暖まった懐を抱えながらそんなことを想い、ひつるは居酒屋へと向かった。

 

-さいろうさん-

さいろうさんとの出会いは昨年の9月下旬であった。仕事のピークも過ぎてまたぶらぶらとした生活が始まり、ぼくはとある河川敷で夕方ラフスケッチをしていた。だいぶ日が暮れてもう限界だなと片づけ始めた時犬の散歩をしていたさいろうさんと初対面した。

「おもしろいえをかいちょるの…ぅ…」

「あ、ありがとうございます!」

ぼくは普段褒められるどころか声をかけられる事さえ滅多になかったため、すっかり満面の笑みで返事をした。

「どうかね、君。わしは古物商をしている…ぅー、もの…だが。君さえよければ…こんどうちにきてみてはくれんかのぉ…。」

「ぼくが…ですか?」

「そう、きみだ…。菱鳥町の斎藤妙宝堂というところで…あぁ…北町と駆來市の交差点があるじゃろ…東泉マンションがたっとる…あそこのマンションと北町側の道の間をの、まっすぐ奥に…あぁ…進むとあるから。小さい建物だが、まあくればわかるでの。」

「はい」

「じゃぁ…またの」

そういうとさいろうさんは白いひげをなでながらゆっくりゆっくりと黄昏の町の奥へと消えていった。

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