騙されたかったけれど
こういうものにだけ敏感な僕の鼻は
しっかりと変わり目を悟ってしまって
静かな夜 まやかしの祭り
乾杯した訳

カフェの明かりが夏と秋の空気に揺れ
おいしいビールもふと気を緩めれば覚めてしまう
そんな、そんな危い季節になり始めた

静かな夜 まやかしの祭り
乾杯した訳

しってる
みんなしっている
あいつはどうも苦手だ
あいつに悪気はないのだけれど
凍口が感染していることにあいつは気づいていない
まあ、それが凍口なんだけれど

夏ならクーラみたいでいいじゃないか
そういうあなた、じっさい凍口に罹った人にあったことないでしょ?

凍口の人が話す声は小さな冷気の渦になって
それを聞いている人の耳に入り込む
そうして感染するのだけれど
はじめは耳の奥で1月の降雪のような静な音がする
そのうちだんだん体の芯が冷えて喉の奥から中心にかけて
まるでソフトクリームをかまずに飲んでしまったかのような感覚に陥る
実際は心臓が凍り始めているわけなのだけれども

一度凍口に罹った人は基本いっしょうそのままだ
今まで通りに会話はできるのだけれども、周りは誰もうつりたくないから
マスクをして凍口の人と話をすることになる。それとま、耳栓と骨伝導受音イヤホンは必須。
それさえ用意していればOK

で、あいつもそれにかかっている訳。今日もいつもと同じ困ったようなの冷たい表情だ。
一度ためしに「おまえ凍口になってるぞ」と話してみたが
もちろん笑って冗談だととられた。そう、凍口の人は感染しきってしまうと自分が凍口だと自覚することが
できなくなる。だれひとりとして。だからもちろん、あいつはちゃんと耳栓、イヤホン、マスクしていた。
すこしかわしそうな気持になってしまったよ。

そんなわけだから、凍口には注意が必要だ。
身の回りにそんな特徴のある人がいたら耳栓、骨伝導イヤホン、マスク。
より詳しく知りたい人は遠慮なくぼくにききにきてくれたまえ。

あ、そうそう。もうひとつ重要な特徴忘れていた。
凍口の人は口から始まり顔全体が凍り付いてしまう。要するに表情に変動がないんだ。
そこに気を付ければ100パーセント判断できるだろう。

ではまた!

END

終わり

2014.08.20 中途半端な話
そう、海にさえいかなかったんだ。

でも満たされないわけではなかった
けれどそれは不吉な警告。


ぼくはなにがなんで夏を大事にしなきゃいけないと
自分に言い聞かせいやいや夏になったわけじゃあもちろんない。
ぼくは夏があれば幸せで夏にいればどうしようもなくて…その繰り返しを愛しているのかもしれなかった。
そして深層心理はその永久性を求めていたような気がする。

なんだかわからないそれはまあ、妄想で。
そんなこんなで生きることは現実逃避かもしれない(実際は現実豆腐)

そう、この夏充実しなかったわけじゃないんだ。
季節の夏だけで満足していた僕は夏における人間ドラマに焦げ付いた。


焦げている男の発言として聞いてください。
やっぱり妄想でもあるのかもしれない。
怒涛に流れ出すぼくの得ただけの夏の表現は
使い果たされることなくぼくのあたまのなかで不満口をこぼす
そんなんだからいつもぼくのあたまは夏の表現に浮かされ支配され
けれどつながれることのない体は行き場をなくし
そして現実的な夏の暑さに浮かされ支配され
冷たい場所をさがしては転がり続けるだけ

このままではきっと秋ごろ
僕の頭はばくはつしておかしくなりそうだ
そうなってはこまると方法を無理やり考えようとするのだけれども
ああ、劇薬のビールはまだ早い
ああ片手の指、それくらいだ
蛙鳴蝉噪ぼくはそこにいなかった
とおりずぎた
いつもなら感覚くらいはせめて残るのに
「なにもしてあげられないね」
そうして心にもないことばを夏はぼくに放つ